なぜか宮崎

映画『美女と野獣』を観たい……突然の衝動が全身を駆け巡った。
7月がもう終わろうとしていた。映画公開日から優に3カ月が経っている。

遅い。観ようと思い立つのが明らかに遅すぎた

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映画情報サイトを見てみると、4月に封を切った映画を未だに上映している映画館はほとんど無かった。九州では唯一、宮崎県の「延岡シネマ」というところのみのようだ

宮崎……行ったことがない。宮崎……北九州からめちゃくちゃ遠い。

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↑九州を表した絵(除く沖縄)

乗換案内で調べると、北九州から延岡は特急電車で3時間半以上かかることが分かった。
『映画を観たい』という思いだけで行っていいものなのだろうか。

花火大会もあることだし

「延岡へ行く」ということにもっと納得したくて色々理由を探していると、この日(7月29日)は延岡市の花火大会、「まつりのべおか花火大会」の開催日だということが分かった。

そうだ、美女と野獣を観るついでに花火も観よう・・・・・・。

そのとき既に15時を過ぎていた。20時から始まる花火大会に間に合うよう、急いでリュックに荷物を詰め、すぐに家を出る。

とにかくトンネル

延岡の観光情報を少しでも手に入れるべくスマホで検索していたのだが、北九州から延岡までの道中は山が多く、それゆえトンネルも多いのでしょっちゅうWi-Fiが切れる。

そんな中で「延岡はチキン南蛮発祥の地」というオイシイ情報を手に入れた。

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延岡に着いた。予想通りヤシの木がある。
わたしが抱いている宮崎県のイメージは「ヤシの木、マンゴー、東国原英夫さん」だ。

「アパホテル」と「アーバンホテル」がある

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駅からホテルへ急いで歩く。このとき既に19時半を過ぎていた。花火が上がるまで30分を切っている。とりあえずパソコンが入った重いリュックを一刻も早く部屋に置きたい。

「延岡アーバンホテル」なら見つけたが、わたしの予約した「アパホテル延岡駅南」が一向に見当たらない。スマホのマップにも何故か表記が無い。

駐車場に立っていた人のよさそうな老婦人に「アパホテルはどこですか」と尋ねて道を教えてもらう。
言われた通りに進んで辿り着いたのは、さっき通り過ぎた「延岡アーバンホテル」だった。

恥ずかしいので絶対に目が合わないように下を向きながら、アーバンホテルのフロントでアパホテルの場所を訊く……。

混んでない花火大会

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やっと辿り着いたアパホテルの接客の良さと機能性に感動しているうちに花火大会は始まった。出窓からも小さく見える。今年に入って始めて観る花火だ。

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ホテルの一室から観るのも結構楽しいしエアコンが効いていて快適だが、何かが足りない。

外に出て花火が上がっている方へ歩いてみる。川沿いには浴衣姿の恋人たちや老夫婦、親子が立っており、皆同じ方向を見つめて微笑んでいた。

辺りに花火以外の光はほとんど無かった。地元の人たちの中で少し浮いているような自分を闇に紛れ込ませる。

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人が集まっている地点まで来たが、屋台が4台しかなかった。もっと打ち上げ地点に近い場所に行けばもう少し賑わっているのだろう。

今まで花火大会というのは場所取りをしたり浴衣を着たり人にぶつかったり人の汗でべちょべちょになったり満員電車に乗ったり場所が悪くて上手く見えず悔しがったり……と、わりと大変な思いをして観に行くものだったが

知らない街で知らない人たちと観る小さめの花火も気楽で良かった。


ホテルまでの帰り道、ある一つのことだけが不安だった。

翌日の『美女と野獣』上映時間は朝の9時20分。

寝過ごさず、延岡までやって来た本来の目的を果たすことはできるのだろうか……。

つづく